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この時期の私の体験は、その後の私の人生にとって、掛替えのない貴重な財産になった。書き残したい事があり過ぎる中から、生々しい記憶の幾つかを無理やり選び出して書く事にせざるを得ないのだが、私の苦闘を暖かく支えてくれた仲間が何人もいた、そのお蔭で今日がある事に深い感謝を込め、書き落としたエピソードに係る仲間にお詫びしたい。 |
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「製缶工」と言うのは、昔は「鍛冶屋」と呼ばれ、もっぱら鉄が相手の仕事だ。
鋼管の作業が手待ちになったある日、親方が私ひとりを、とある町工場に連れて行った。「定盤」と呼ぶ分厚い鉄の台に、溶接の熱で幾分歪んだ鉄のアングルを、ハンマーで叩いて歪みを取る「ひずみ取り」俗に「蜆採り」と言う作業だ。
どこをどう叩けば「ひずみ」が取れるかは、親方の経験と感による。親方が合いの手で示す箇所を、何ポンドか、ともかく一番でかいハンマーで、思い切り打つ。狙い通りに重いハンマーを振り下ろすのは、そう簡単ではない。 |
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