前代表社員長崎真人自分史
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第二部】第七話 「常任になる気はないか」と問われて?・・・()
 
第7話 「常任になる気はないか」と問われて?・・・

 7月のある日、彼の中年の同志が、私ともうひとりの若い同志を前にして、改まった調子で「君たち常任になる気はないか」と聞いた。
 常任と言うのは、党の機関の働き手で、職業的に革命運動に専念する者を言う。もとより、職場を捨て個人生活の全てを擲って、全生涯を革命運動に捧げる決意を要する事であった。
 
 もうひとりの同志は返答をためらい無言であった。彼は私が最初に会った党員で、その兄は学者でありながら戦時中刑務所に繋がれていたと言う事であったから、彼は私よりも革命運動の何たるかを具体的に知っていた。彼が躊躇したのは、それだけ大きな勇気を必要としたと言う事だったろう。

 私は、彼とはいささか感覚を異にしていた。私は、マルクスやエンゲルスの古典から一歩進んで、レーニンの「国家と革命」はじめ何冊かの党と革命運動についての論文を読み染めていて、理論的には(単純)明解に割り切っていた。
 実践面でも、入党後1年余の猛烈な活動で、正直に言って、試験場の中だけの狭い世界での活動に物足りなさを感じ始めていた。