前代表社員長崎真人自分史
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第二部】第七話 「常任になる気はないか」と問われて?・・・()
 
アメリカ型の資本主義的大農場経営かソ連型の社会主義的共同経営化の方向か
 現存の狭い圃場・小規模な経営にあわせた独特な小型の農業機械を案出する努力よりも、欧米で完成している技術を導入する方向での検討が、むしろ日本農業の新しいあり方に合致していると私は考えた。問題は、経営規模・形態をどうするかと言う、農業政策・社会政策上の問題だ。
 アメリカ型の資本主義的大農場経営がお手本になるか?否だ。アメリカ農業の発展の陰に、黒人やプアホワイトの奴隷労働がある事は明らかだ。たとえ規模の利益で生産効率が上がったとしても、この道が大多数の農家の幸せを保証するものではない。
 大規模経営を創出しようとすれば、農地解放で土地を手にした農民同士が手を携え共同化の方向を目指す事、これこそ日本農業の将来の発展方向であろう。
 
研究室の外へ! 農民と共に社会変革の道へ!
 そうだとすれば、研究者も専門分野に閉じこもって、社会の変動に吾関せずと決め込んでいるわけには行かないではないか。いやむしろ、研究者の使命としても、社会に向かって発言し、農民と共に新しい農業の建設を目指した政治的解決に力を注ぐべきではないか。私はそう考えた。
 私の理論は若く、明快ではあっても、多くの研究者たちの同意を得る力までは備えていなかった。社会変革の運動の実践面での困難さ複雑さ、現実の条件を見る目は、私にはまだなかった。
 しかし、未熟さはあっても、戦後の変動期、ひたすら前だけを見据えて体当たりする若さが、この時代を動かした事も間違いなかったと思う。