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試験地では年に幾度か、各研究室の研究成果を発表するセミナーが行われていました。私は幹事に勧められて、そのセミナーでエンゲルスの「家族・私有財産および国家の起源」の解説をやる事になりました。
毎回のセミナーで研究発表をやるのは、各研究室の中心的な研究員でした。私のような若輩が、それも試験場の研究テーマとはかけ離れた共産主義理論の解説をやらして貰ったと言うのは、恐らく空前絶後の事であったかと思います。 |
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| 記憶では幹事さんからの話は、何か自然弁証法に関する事か、あるいは当時論じられていた科学技術の階級性と言うようなテーマではなかったかと思うのですが、私は「家族・私有財産および国家の起源」を読んだばかりで、エンゲルスにゾッコン、魂を奪われたような状態でしたので、これ以外のテーマが頭に浮かびませんでした。それにしても、これは唯物史観の古典中の古典、モルガンの古代社会をベースにしながら、階級社会の成立、国家の出現、更には、資本主義から未来の共産主義社会に至る展望を、極めて科学的合法則的に解き明かしたものですから、本当はとても私の手に負えるものではありません。まして2時間で解説するなど不可能な事。怖いもの知らずの若さ故と言うほかないのですが、それでも、できる限り興味を持って頂ければと思い、婚姻形態の歴史の部分を中心に話をしましたので、まずまずだったのではないかと思います。30人ほどの聴講者が最後まで聞いてくれ、私が属していた研究室の主任が聞きに来てくれていて、セミナー終了後に「とても面白かった。良く研究したね」と言って褒めてくれたのは嬉しかった。 |
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