前代表社員長崎真人自分史
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第一部】第十五話 敗戦そして亡国の民に吹きすさぶ戦後の嵐(
 

 「吾が祖国の軍隊」は、無学文盲。電気も水道も始めて見る。眼に入るものは何でも持っていく、ひたすら略奪を事とする匪賊の集団であった。
 上官は、日本が蓄えた資産を残らず私有化する事に血道をあげ、兵隊たちは、自転車でも店に並ぶ商品でも、果ては市民が身につけた時計や万年筆までも、手当たり次第取り上げて持っていくと言う有様で、台湾人同胞の歓迎の色は急速に消え、失望と恐怖がとって替った。

 

  私たちが内地に引揚げた翌年(1947年)「2.28民変」と呼ばれる、台湾全島を震駭させた大暴動へと発展する兆しが最初から見えていた。
 「犬が去って豚が来た」と言うビラが街に貼られた。「日本の犬は喧しく吠えてうるさかったが、まだしも番犬の役には立った。しかし、国民党の豚どもは貪欲で何でもかんでも食い漁るだけだ」と言う風刺だ。
 「2.28民変」の事は次号で取り上げたい。