前代表社員長崎真人自分史
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第四部】第十話 続けて父と母を亡くす()
 
第十話
 どなたにとっても、また幾歳になっても、親を亡くす悲しみは深い。まして、戦中・戦後の例えようもない苦労を重ねた世代、親子の間も思うに任せなかった。行き違いもあった。それだけにお互いの思いには深いものがあった。
 
 私の事務所経営に少しばかり余裕を見るようになった10年ほどの間、父母は、冬の間、町田のわが家で過ごした。日程を割り出して旅にも出た。思えば、親子の情を通じ合う貴重な日時だった。

 だが、それはそう長くは続かなかった。
 突然、母が脳梗塞で倒れ、病院と介護施設を行き来する事になった。
 父は精一杯、看病に努めた。倒れて5年、母は父に甘えて過ごし、幼子のようなあどけない表情で逝った。