前代表社員長崎真人自分史
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第四部】第四話 ゼロから出発の税理士事務所()
 
第四話

 資金はゼロ、客もゼロ、すべてゼロからの出発だが、夢だけは持っていた。
 税理士の資格を武器に、自分独りの才覚と責任で自由にやれるのだから、それまでの苦労からすれば、先は明るい。
 それにしても、見ず知らずの土地に裸で飛び込んで行くのだから、無鉄砲と言えば無鉄砲な話だった。
 
 妻とふたり、藤沢の自宅から車で約1時間かけて、自宅兼事務所探しに町田市内に幾度か通った。
 間もなく、玉川学園1丁目に気に入った物件を見つけた。駅から徒歩15分程離れた丘の上、玄関先に4畳半の応接間があり、これを事務室に当てる事にし、10畳のダイニング、6畳の和室を夫婦用に、3畳2部屋を子供ふたりに当てる事ができ、間取りは満足。外観も郊外の住宅らしい落着いた趣だった。
 家賃は、藤沢の借家の3倍余、でも相場としては格安と言って良かっただろう。
 難点は、公道から30メートルほど入る未舗装の坂道が、雨降りには車が滑って大変だった事。何しろ古い建築で両3年ほどで雨漏りがし始めた事。