前代表社員長崎真人自分史
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第三部】第八話 浦島太郎の心境()
 
 白根硫黄鉱山は、箱根の大涌谷同様に噴煙が上がる火口にあった。労組事務所を訪ね目当ての同志宅を教えて貰った。鉱夫小屋と言うのだろう、小さな長屋の一角だった。ここでは、日暮れに着いて翌朝出るので、何をする事もなく、泊めて下さったお礼にパンフレットを何冊か置いてお暇した。
 翌朝、草津目指して下った山腹の見晴らしの素晴らしさは、今も目に焼きついている。

 
 嬬恋村の開拓地には、満蒙義勇軍の生き残りと言う青年が独りで、荒地と取組んでいた。採れたばかりのジャガイモを、勝手に煮て食べてくれと言う。空きっ腹だったので、お言葉に甘えて鍋一杯に煮たら食べ切れなかった。申訳ないことをしたと今も心残りがしている。
 ここでは、草津=軽井沢間の私鉄「草軽電鉄」が廃止になるのに反対する、住民集会が夜開かれると言うので参加させて貰った。
 こんな事で無事何とか1週間の行程を終えて高崎に戻った。指導に当たった党青年対策部のリーダーは、大成功だと評価していたが、1文無しで1週間、山の中を歩いてきたと言うのが、まあ珍しい体験と言えば言えるだろうが、何かの訓練になったのだろうか?ただ地元の皆さんに御厄介になっただけだったのではないかと悔やまれた。