前代表社員長崎真人自分史
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第一部】第十八話 野の花は枯れず(10
 
私の故郷・台湾への想い
  誰でも、自分が生まれた土地に格別な想いを抱かない人はいないだろうと思います。まして私は、台湾の田舎で生まれ、18歳になるまで台湾の各地を転々としながら育てられました。とりわけ、台北高校では、青春の最も多感な時期、台湾の同窓と寝食を共にしました。だから、故郷を思うように、台湾が今どうなっているか、台湾の人たちがどうしているだろうか、関心を持たざるを得ません。

 台湾は本当に良いところ、台湾の人たちはみんな良い人です。その台湾の人たちが、日本に対して抱いている想いについても、我が事のように理解できる気がします。しかし、だからこそ近年、日本の一部に、台湾の人たちの厚意を誤って受け止め、誤った方向へ台湾問題解決の矛先を向ける傾向が見える事に危惧を抱いています。
 
 日本人は、基本的に戦前の日本による台湾統治が「植民地支配」であったと言う事を忘れてはならないと思います。ノスタルジァからアナクロニズムに陥ってはならないと思います。どんなに台湾の人々が日本人を好意的に迎えてくれたとしても、気安く軽々しく、かっての植民者を思わせるような素振りがあってはならない。まして台湾統治の業績をひけらかしたり、干渉がましい態度を取ったりはとんでもない事だと思います。

 台湾は台湾の人々のものです。台湾の将来は、台湾の人々の意思で決定されるべき高度の自治に属する問題であろうと思います。同時に、中国本土と台湾との関係は、古い兄弟の間の関係であって、しばらく兄と弟が違った環境にあったとは言え、長い歴史の尺度で見れば、あくまで同じ民族の国内問題であって、外国の利害に影響されたり、干渉を許すような事は決してあってはならない事だと思います。