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小高い丘の中腹にあつた官舎からは、少し離れた所に台湾人街はありました。双渓の街は、双渓川に沿って発達したのでしょう。川を挟んで市街があり、駅は橋を渡った川向こうにありました。
その台湾人街のお祭があると言うので、兄に手を曳かれて見に行きました。
双渓の中心街は、2階建てか3階建てかの赤レンガの立派な家並みが続いていました。驚いたのは、その「亭仔脚」の門口ごとに並んだ豚の丸蒸しの姿。綺麗に蒸しあがった丸ごとの豚が前足をついて座った形で飾られていました。その豚の口には、どれもこれも真っ赤な饅頭が咥えさせてありました。 |
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「亭仔脚」と言うのは、台湾の商店街特有の構造で、陽射しを避けるために1階の道路に面した部分が、アーケードのように通路に供されていました。日本の雪国の「雁木」に似た構造です。
街の広場では、仮設の舞台が設けられて、今しも台湾芝居の真っ最中でした。はじめて見る台湾語の芝居ですから、幼時の私には筋書きも何も理解する術はありませんでしたが、真っ黒い豊かな髭を蓄えた堂々たる姿の主役が出てくると、一斉に爆竹が破裂し、樂の音も最高潮に達し、耳を劈くばかり。朗々たる音吐の台詞の独唱も見事で、京劇にも、日本の歌舞伎にも共通する大見得を切ります。そして再び爆竹です。恐らく三国志の関羽か、台湾に縁の深い鄭成功かではなかったかと思います。 |
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