前代表社員長崎真人自分史
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第一部】第五話「台湾芝居と爆竹と豚の丸蒸し/台湾の豊かさの根源」(
 
警察官駐在所で鞭打たれる若い男の姿
 双渓街の入口に警察官の駐在所がありました。兄と二人でお祭に行く途中、その前庭で、上半身裸の台湾人が、両手に高く椅子を持ち上げて正座しているのを見ました。幾時間そうしていたのか判りません。疲労で手が下がると、後ろに立った警官の容赦ない鞭が音を立てて肌に食い込みました。幾筋もの血の筋が裸の体に走っていました。その血の色と「アイゴーアイゴー」と言う声は、今も幼い日の記憶に鮮明です。


 

 台湾では警察官の権限は絶大で、この台湾人もどんな罪を犯したのか判りませんが、裁判も経ずに残虐な刑を課せられていたのだと思います。 台湾には、“笞刑”と言う前近代的な刑罰が、台湾総督府の条例で定められていました。

 1896年
(明治29年)
台湾総督府、犯罪即決例を制定。警察署長、憲兵隊長に軽犯罪の即決権を付与。
1898年
(明治31年)
台湾総督府、匪徒刑罰例制定、首魁・教唆・謀議・指揮に死刑。
1904年
(明治37年)
台湾総督府、罰金および笞刑処分例制定。