事務所ニュースNo.285 2017.8.1 TOPへもどる 前号 次号

法人税と個人所得税
税率の違いによる納税額負担感?

 現行の法人税等の税率は、法人税15% 地方法人税0.66%(国税、合計15.66%) 東京都の場合の地方税は、法人住民税1.935% 法人事業税3.4% 地方法人特別税1.469%(地方税合計6.804%)となっています。ただし、この税率は中小法人でかつ所得金額400万円以下の場合であり、均等割(70,000円)は含んでいない。
 国税15.66%と地方税6.804%で、合計22.464%の税率である。一方、個人所得については、所得金額に応じての5%から45%までの所得税と10%の個人住民税(均等割別途あり)で、最大合計55%の税率となっている。
 法人の決算において、法人税額を抑えるために法人所得を赤字にするという選択肢が一般的であったと思うが、納税額をトータルで考慮するとより税率の低いほうを選択することが自然の流れ。所得税か法人税か悩ましい選択ではあるが、参考として 「個人所得で22.454%になるのは、年収から給与所得控除や保険料控除、扶養控除等の各種控除を差し引いた課税所得560万円程度の金額となる。(560万円で22.36%、570万円で22.5%の税率) 夫婦2人で社会保険料控除60万円 生命保険料控除額10万円で試算をすると、給与の収入金額が917万円程度となる。」
 もちろん、会社の所得と個人の所得は別物であり同族会社の社長といえども勝手に会社の財産を使えるわけではないが、過去のあれやこれやで高額報酬としてきたが報酬の減額にはトータルで考えると節税効果がある。
 高額役員報酬を減額する効果は、節税だけでなく社会保険料が引き下がることも会社にとっては大きい効果。健康保険や厚生年金保険料は、支払われる給与の額により計算された標準報酬月額により算出される。(7月10日までに年金事務所に提出)
 ただし、だからと言って会社の事業年度の中途での報酬の変更は不可なので、会社の利益見通し、会社代表としての頑張りが報酬につながらないなどモチベーションの低下、繰越損失などを考えて総合的に判定をする必要がある。減額や増額などの変更は慎重に。

共謀罪と税金

 所得税か法人税どちらで納めるか悩ましい問題ではあるが、実効税率20%台の 「二人以上で話し合い、計画」 しただけで、何ら実行していないのに 「犯罪」 となる共謀罪(組織犯罪処罰法改正案=テロ等準備罪)が国会で審議されています。
 共謀罪に該当する法律は277法ありますが、その中には所得税法、法人税法、消費税法等も該当しています。
 所得税や法人税・消費税を 「偽りその他の不正行為による税の免脱等」を話し合い、計画した場合は共謀罪が適用されることになってしまいます。「偽りその他の不正行為による税の免脱等」 とは言いかえれば脱税行為=税務調査で、収入金額の計上もれを指摘され重加算税を課せられた場合などが該当することになります。

社長

「今期は利益が増えそうだ。利益を減らすための工夫はないか。期末の売上げを来期に回したいがどうか」

税理士

「今期払う税金を来期に繰り延べするだけだが、社長がOKするならそれで申告書つくります」

などと相談したことが商売敵などの耳に入り、 「警察に密告」 され厳しい取り調べの結果、相談をしたことが立証されれば 「共謀罪」 が適用され、懲役刑等が科せられる事になってしまいます。

〈法務省のホームページでは、以下のような例示が載っています〉
◆ 共謀罪成立の例=脱税請負人集団の構成員らが、帳簿を操作するなどして多数の会社の脱税を行うことを計画
◇ 共謀罪不成立の例=会社社長が、会社の業績が思わしくないことから、顧問税理士と話し合い、脱税をすることを計画

しかし、この例示にはいろいろと疑問があります。
「うちの税理士事務所は脱税請負人集団です」 などと公言する人は誰ひとりいません。「脱税請負人集団」 か、どうかの判断は 「警察や課税当局」 の手の中にあり、恣意的に行われることは十分考えられます。
 また、多数の会社とは何社以上なのか。これも当局の考え次第です。税金の支払を少しでも節税したいと相談(たとえその内容が不正な操作であったとしても)したことが、テロ行為の阻止とどう関係するのでしょうか?
 このような法律が成立すると 「密告」 「盗聴」 「監視」 が大手を振って行われる可能性があり、人間の内心を処罰する共謀罪法は戦前の治安維持法の再来ともいわれています。
絶対阻止しなければと思います。

春の税理士は研修シーズン、確定申告も終了し
久しぶりに研修に参加してきました。

【全国税制懇話会春季研究会】
春季の研究会は、大淵博義 中央大学名誉教授による講演「資産課税をめぐる課税上の諸問題」
報告は、
①中村明会員の「最近の税務調査の動向」
②阿保秋声会員の「小規模宅地の特例」
③小田川豊作会員の「税務当局の動向 −東京国税局開示資料から−」が報告されました。
(4月9日〜10日 箱根にて)

【東京税財政研究センター】
研究センターの第56回公開講座は、
「2017年度税制改正の実務への影響」として
①小田川豊作会員による「国税犯則取締法と国税通則法改正」
②石井裕二会員による「法人税法改正のポイント」
③千田範道会員による「4〜6月期の税務調査の特徴と対応」が報告されました。
報告後は、税制改正や税務調査についてディスカッションが行われました。
(4月17日 御茶ノ水にて)



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