前代表社員長崎真人自分史
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第四部】第五話 事務所運営の基本を確立(10)
 
警官が郷里の玄関に立つて
 1950年代、レッドパージ、朝鮮戦争、党と民主団体に対する半非合法化の嵐の時代。郷里村松の家の玄関に、警官が二人突然入ってきて「お宅の息子さんは今どこで何をしておられるか」と、取しらべ調で問い質そうとした。
 父は当時、中学校の教職に就き、教員組合の分会長を引き受けたりしていたので、ある程度は政治問題に対する理解も持ち始めていたようだったが、一面、自分自身の職に響く心配もあった。
 何しろ田舎町での事、息子が警察の「捜査」を受けるなど唯事ではなかっただろう。私が築地警察に拘留された件は、家には知らせずにいたのだが・・・・。
 

 祖母がまだ元気でいて「真人が警察沙汰になるなんて何と言う事だ。母親の愛情が薄いからこんな事になるのだ」と、姑に責められた母は身の置き所がなかったと言う。
 取るものもとりあえず、生れて初めて、それも単身で上京し、私を訪ねてくれた。
(第三部第九話参照)
 そんな過去もあり、父も母も、深い霧が一遍に晴れたような感慨で、私の開業を喜んだようようだった。