前代表社員長崎真人自分史
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第一部】第十七話 追われる如く去る故郷台湾(
 
 戦後、海外から日本へ密航した第一号であったろう。それは、何とも表現し得ない悲劇だった。彼は本当にいい奴だった。みんなに愛されていた。体格も知能も人並み以上だった。悲劇の起こりは、彼の身体に日本人の血と台湾人の血とが半々に流れていたと言う事。更には、日本人として最高の教育を受けた精神が台湾に居残る事に何としても同意できなかったと言う事であろう。

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台湾人民の血に染む史上空前「2.28民変」大弾圧

 1947年(多くの日本人が引揚げた翌年)2月27日、台湾人民の歴史に刻まれた空前の事件は、台北の古い台湾人街の中心・大稲の路上で闇タバコ取締りの官憲が台湾人の老婆を殴打した事に始まった。
「犬が去って豚が来た」と言う標語は前に紹介した。略奪・横領・収賄を日常とし、ひたすら私腹を肥やすだけの国民党政権に対する、民衆の不満は限界に近づいていた。