事務所ニュースNo.291 2018.7.2 TOPへもどる 前号 次号

のぞき見で取得?=横目資料

 5月に「所得税法違反事件」で寝屋川市役所の男性職員へ有罪判決がされました。懲役6ヵ月(執行猶予2年)罰金1200万円の判決です。
 事件は、競馬新聞などよりねらい目を定めてJRAが指定する「WIN5」で2014年と2015年の2年間で約2億8600万円の馬券を的中させていたが、その利益を申告していなかったため所得税脱税の罪に問われたものであります。男性職員は、脱税の起訴内容は認めていたが、その当たり馬券の入金口座を把握した大阪国税局の調査手法に問題があるとして、調査無効を訴えていたものです。その国税局の調査は、別件の事件における銀行での反面調査の際に「別件の情報をちらりとのぞき見をし(横目)その結果、男性職員の口座を発見し資料を持ち帰り調査を行ったものであり、違法な情報収集」である旨を男性職員は主張していました。

銀行調査における「横目」
 この国税局の調査手法が、銀行調査における「横目」であり、「横目」で収集した資料なので「横目資料」と言われるものです。銀行調査は、調査が必要な者の口座に絞り調査をすることがルールであり、その口座調査は、「預貯金の名義は異なるが、同一であると認められる者も含む」とされていますので、範囲を広げても納税者(法人)とせいぜい家族や役員の範囲までと考えられます。調査対象の個人や法人と無関係な不特定多数の口座を調査することはルールから逸脱をした違法性の高い調査手法です。

調査手続き?
 また、平成25年の国税通則法改正により調査手続きが法制化されたこともあり「調査開始前の銀行調査」は、正当なる調査とは言えないもので、男性職員の主張「違法な調査手法」には賛同するところが多々あります。
 裁判では、国税側は「資料はあくまでも偶然発見したものであり、違法なものではない」そのうえで資料収集等の情報開示要求には「具体的には守秘義務があり証言を拒否する」と拒みました。裁判所は、大阪国税局長宛に「守秘義務を解除する」ように要請をしましたが「調査に重大な支障をきたすので」と応ずることはありませんでした。
 個人情報を勝手に取得する調査手法は、到底認められるものではありません。
もっともっと個人の権利が大切にされる社会でありたいものです。

(吉田)



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