「ベトナム最後の楽園」と言うコンダオ島に行って来ました。
私も人並みに年をとり、そろそろ「人生最後の海外旅行」になるだろうと、のんびり休息できる南国のリゾートを探していて、見つけたのがこのコンダオ島でした。
コンダオ島は、ホーチミン市から南へ230kmの海上に浮かぶ絶海の諸島のひとつ。可愛いプロペラ機で45分。フランス植民地当時から200年に及ぶ流刑地であったため長く手付かずで、本格的な開発が始まってまだ2年余、正に「最後の楽園」と名付けるにふさわしい、自然そのままの南の島。
開設間もない唯一のホテルが独占するビーチは、南北を小高い岬に抱かれた入江で、黄金色の砂浜が1km余も続き、濃淡幾重ものコバルトブルーの海はさざ波が立つだけ、空はあくまでも澄んで純白の入道雲がいくつも浮かぶ。乾季・雨季の丁度境目のシーズンで、昼間気温は35度前後でしたが、頬をなぜる風が心地良かった。50棟余のプライベートプール付のビラは半数近くが空室。海浜に遊ぶ人影は、ヨーロッパ系のカップルが1日1組か2組見られただけ。アジア系の客は我々2人のみ、気を使う事は何もない完全な解放感でした。
ホテルの「おもてなし」も最高といって良いでしょう。食事がどれもこれも日本人の味覚に合って美味しかった事、現地人のスタッフの素朴で優しい気配りと笑顔が何よりでした。
さて、私がコンダオ訪問を決めたもう一つの目的は、名にし負う「コンダオ刑務所」見学でした。ホテル主催のオプショナルツアーがあると言うので申込んだところ、希望者は我々2人だけ、ガイドの話ではホテルの客で参加する人は殆どなく、日本人は極めてまれだとの事。2人のためにワゴン車に運転手とガイドが付いて、希望通りの見学ツアーになりました。
島の中央部にある刑務所跡地には、歴史記念館が併設されていて、フランス時代から米軍によるベトナム戦争までの植民地解放の戦いの歴史を展示し、その中で、囚われた志士たちが如何に残酷な仕打ちで命を奪われていったか、何百もの蝋人形のすべてが全裸で鎖に繋がれ鞭打たれる姿が、言語に絶するリアルさで表現されていました。女性の受刑者も少なくなく、ガイドの若い女性も涙を抑えながらの説明でした。2時間ほどの見学コースの最後に、綺麗に整備された墓地と記念碑を拝んできました。広い蓮池に紅白の大輪の蓮の花が咲き誇っていたのが安らぎでした。
この島の人たちの優しい笑顔と、この国立記念施設が大切にしている歴史との対比には、余人の理解を超えるものがあります。「楽園」の名にふさわしい美しい自然と、そこで営まれたベトナムの人々の類まれな抵抗の歴史とが、ひとつに凝縮されたのがこの島だと言うべきなのでしょう。
帰路、半日観光したホーチミン市の発展ぶりにも目を見張りました。私のベトナム訪問は14年前と2度目になりますが、復興初期とは様変わりして、市の中心・ドンコイ通りは銀座や青山をしのぐかと思う華やかなファッションの若者たちで賑わっていました。
ちなみに旅行費用は、4泊5日の日程で一人20万円余。一寸した贅沢な国内旅行並みの金額です。機会があればご案内したいと思います。 |